組織は、著しい環境影響を持つか又は持ちうる環境側面を決定するために、組織が管理でき、かつ、影響が生じると思われる、活動、製品又はサービスの環境側面を特定する手順を確立し、維持しなければならない。 組織は、環境目的を設定する際に、これらの著しい影響に関連する側面を確実に考慮しなければならない。 組織は、この情報を常に最新のものとしなければならない。 |
1. 用語の意味★環境側面:『環境と相互に影響しうる、組織の活動、製品又はサービスの要素』環境への負荷と環境への負荷を生じさせる活動を合わせたもの、つまり、環境に影響を与えうる組織の活動、製品又はサービスにおける環境負荷に関連するものです。 考えやすい例としては、排ガス、廃水といったもの、あるいは電力、騒音といったエネルギー。これらは設備、作業又は工程が環境に対して直接影響を与えているのではなく、設備や工程が動いたり、作業を実施することにより発生したもの、又は消費したものが環境に影響を与えるので、環境側面として抽出するものは”もの”又は”エネルギー”となります(設備、作業又は工程そのものが環境側面とはなりません)。 ★環境影響:『有害か有益かを問わず、全体的又は部分的に組織の活動、製品又はサービスから生じる環境に対するあらゆる変化』 環境側面の結果として、環境に与える変化をいい、悪い影響、良い影響は問いません。例えば、水質汚濁や大気汚染、天然資源の枯渇などがあります。 ★環境影響評価: 環境側面の結果としての環境に与える影響の「大・小」を判定することで、環境影響が生じる可能性と影響が生じたときの重大性により判定します。 ★著しい環境側面: 組織が決めた評価基準に基づき、一定のレベルを超えると評価される環境影響を持つもので、これを環境目的・目標の設定にあたって考慮して施策を進めることにより、環境影響を少しでもよい方向(有害:小さく、有益:促進)に持っていくことが狙いです。 ★環境負荷:『人の活動により環境に影響を与えるもので、環境保全に支障を及ぼす原因となる恐れのあるもの』 環境基本法中で用いられている用語であり、企業の場合では、事業活動に必要なエネルギー・原材料・部品及び事業活動に伴なって発生する排水や排ガス、あるいは廃棄物や騒音をいいます。 2. 環境負荷、環境側面と環境影響の関連性ex1)自動車の排ガスによる大気汚染「自動車を運転するという行為」は ・・・(事業活動) ⇒ 「運行によりNOxやばいじんを発生させる」 ・・・(環境側面) ⇒ 「大気汚染」を生じさせる ・・・(環境影響) [ 活動 ⇒ 環境側面 ⇒ 環境影響 ]という因果関係が成立する。 (NOxやばいじんを発生させること(環境側面)が原因となって、大気汚染を生じさせる(環境影響)という結果を引き起こす) ex2)環境負荷、環境側面、環境影響
3. 環境側面の抽出・環境影響評価の流れ (添付資料)A) 環境側面の抽出1. 作業工程(フローチャート)の作成まず、環境側面の抽出漏れを防ぐために全体を網羅した作業工程フローを作成します。手持ちの作業標準書や手順書を利用すればよいでしょう。この際に気をつけることは部署間の橋渡し的作業や建物の外部にある付帯設備、排水設備等の漏れがないようにするということです。 自分の目だけから見える範囲でこの作業をすると重要なポイントを見逃し、ひいては後々の手続きに重大な支障を及ぼす可能性があるからです。これは環境側面の抽出漏れに直結し、重大な指摘となります。 また、工程、環境側面は将来的なことを考えれば細かく抽出しておいた方が良いと考えられます。 2. 環境側面の抽出 a) インプット 各工程ごとに使用する材料や設備をまとめ、その中で環境に影響を与え得るものや状況を抽出します。 ex)メーカーからの印刷用紙の受入れ ・業者が車で搬入 ⇒ 車に使用するガソリン、受け入れた用紙 ・積み下ろしに使用するフォークリフト等の電気 ・用紙の保管に使用する移動棚の電気 ・事務処理に使用する紙類 これらをどこまで細かく抽出するか決める必要はあります。 b) アウトプット 各工程や作業において排出されるものの中で環境に影響を与え得るものや状況を抽出します。 ex)メーカーからの印刷用紙の受入れ ・車から排出される排気ガス ・フォークリフト等から発生する騒音 ・用紙の保管に使用するパレットの破損による木クズ 環境側面の抽出で注意すべきことは、必ず敷地内の全ての場所に足を運び、直接目で確かめていくことです。見落としていた浄化槽、毒物・劇物保管庫の無施錠や防液(油)堤の亀裂、あるべきオイルパンがない、雨ざらしになった廃棄設備やドラム缶からオイルが洗い流されている現場を発見するかもしれません。 地面が黒ずんでいる部分は、こぼれた(漏れた)オイルで土壌汚染している痕跡である可能性があります。どんな痕跡・異状にも興味を持つようにしましょう。 敷地内だけではなく、境界線周辺を一巡し、敷地外から見て回ることも必要です。とりわけ工場では、不用意な排水・漏出・廃棄がなされていないか、何か異変に感じるものはないか、を見ます。特に水周りには注意が必要です。 このように足で稼ぐことによって新たに発見される(見落としていた)環境側面は必ずと言っていいほどあります。机上調査だけではほとんどの場合、抜けが生じてしまいます。 敷地内外の観察は、晴天の場合と雨天の場合とで様相を異にする場合があります。晴れの日に気がつきやすいこと(例えば、晴れなのに雨水用の側溝に水の流れがある)と雨の日に気がつきやすいこと(例えば、水たまりが油膜で光っている)があります。 c) 定常・非定常・緊急 インプット・アウトプットの環境側面を抽出する際には常に定常状態・非定常状態・緊急状態を考慮するようにしましょう。通常の作業を実施している状態を定常とすると、作業を中断した場合やメンテナンスを行なっているような状態は非定常、事故・人為的ミス・天災などで緊急事態が発生している(発生する可能性がある)状態は緊急となります。 それぞれの状態を考慮しながら環境側面を抽出し、非定常状態あるいは緊急時の環境側面には(非)や(緊)などと添え書きしておくと、後の環境影響評価や緊急事態の対応の時に環境側面との相互関係を追うことができ、それぞれの整合性についても比較的簡単に説明できます。 B) 環境影響を考えるインプット・アウトプットで抽出した環境側面により発生する結果は何か?を考えます。・ガソリンの使用 ・・・ 資源の枯渇 ・車から排出される排気ガス ・・・ 大気汚染 ・受け入れた用紙の使用 ・・・ 資源の枯渇 ・パレットの木クズの発生 ・・・ 廃棄物の増加 ・フォークリフトから発生する騒音 ・・・ 騒音公害 以上から分かるように、環境側面は「原因」となる発生・消費した”もの”または”エネルギー”であり、環境影響はその「原因」である”もの”や”エネルギー”から生じる「結果」です。 この抽出作業で一番重要と考えられるのは、工程及び環境側面(インプット・アウトプット)の細かさをどこまでにするのか?をはっきりとさせることです。 それがしっかりと定まっていないと、部署ごとに抽出レベルのバラツキができてしまいます。 d) 場面を想定する(環境側面の取りこぼし防止) さらに、潜在的な環境影響を及ぼす環境側面を含めて抽出の取りこぼしを防止するために、活動や物品などに対して「購入前」「搬入時」「保管時」「使用時」「排出時」といった場面を想定すると効果的です。 例えば、昔使ったことがあるが現在は使っていない化学製品などは、環境側面抽出時には保管しているだけのために調査から漏れる可能性がありますが、保管しているだけの場合でも緊急時の環境影響の可能性は残ります。 4. 有益な環境側面有益な環境側面・・・有益な環境影響の要因となる環境側面・・・は、ISO14001規格の用語の定義「3.13 汚染の予防」と組み合わせて考えると分かりやすいかもしれません。3.13 汚染の予防 汚染を回避し、低減し又は管理する、工程、操作、材料又は製品を採用することで、リサイクル、処理、工程変更、制御機構、資源の有効利用及び材料代替を含めてもよい。 (備考) 汚染の予防の潜在的な利点には、有害な環境影響の低減、効率の改善及びコスト削減が含まれる。 具体的には以下のような項目が挙げられます。 ・環境配慮設計活動(設計・開発):長寿命化、軽量化 ・グリーン購買の推進(購買):再生紙、ペットボトル材を利用した作業服 ・事務伝票のペーパーレス化(事務作業) ・不適合品の削減(品質管理) ・環境に配慮した工程の採用:加熱工程の短縮など ・効率の良い生産計画の立案(生産管理) ・環境配慮商品の販売:リサイクルされた材料を使用した商品販売 ・環境負荷の低い資源の利用:天然資源の使用率の減少 ・有害物質の使用抑制・廃止 ・環境汚染物質の蓄積回避・低減に関する技術、作業の採用 ・輸送・梱包改善による環境負荷低減 ・省資源、省エネルギー(reduse、reuse、recycle) ・排熱回収装置の設置 ・コージネレーション ・廃棄物の分別、資源化 事務伝票のペーパーレス化について、IT革命(事務所などのIT化)はペーパーレス時代のさきがけとしても一躍有名になりましたが、実はIT化=ペーパーレス化とはいかないようです。 全てをディスプレイで見るということは現実的ではないですし、紙で保存しておくというのが実は一番安全なのであります。 ということで、IT化によって紙を減らすというのではなく、使用している伝票類のうちでどれが不要であるか、つまり、様式等の改善・効率化を考えるということが一番重要なのです。 有益な環境側面についてもう一言付け加えておくと、有益な環境側面であると思われているものであっても、実は有害な環境側面が存在していてそれを軽減するための活動である場合があります。 これは目的・目標及び環境マネジメントプログラムの裏返しであり、環境側面の取りこぼしや環境影響との引当ミスというものに過ぎません。例えば、植林について考えてみましょう。 樹木を大量に伐採する製紙会社が行なうものは、樹木の伐採という有害な環境側面を緩和する活動に過ぎません。しかし、樹木の伐採に関わらない組織が実施する植林は紛れもなく有益な環境側面です。 つまり、本当の意味での有益な環境側面とは、自分たちの有害な環境側面(マイナスの環境影響をもたらしているもの)以外に対する貢献でなければなりません。 5. エコオフィスづくりの手法1. 初めて使用する木材パルプの使用量の削減(1)目的バージン・パルプの使用量を減らすことは、木材資源の節約を通じた森林の保護や二酸化炭素の吸収減の維持につながります。用紙使用量の削減自体は困難であってもバージン・パルプの使用量を削減すれば森林保護、CO2吸収源の維持への寄与は図れます。 (2)手法・技術 古紙を利用した再生紙の導入や、既に使用している場合はさらに古紙率の高いものへの転換が考えられます。 @エコマーク製品などの使用 古紙利用率が管理されていて、安心して選択できます。 A白色度の低い用紙の選択 メリットとしては ・市中回収古紙の利用拡大が容易になる ・脱墨などの工程に伴う二酸化炭素発生などの環境負荷の低減 B古紙利用の封筒(クラフト紙) ・コンピュータ用の連続用紙の再生紙化 ・トイレットペーパー C紙の使用量、古紙利用率の把握 2. 電気使用量の削減(1)目的電気節約量に見合う量の化石燃料の燃焼削減、すなわち、二酸化炭素等の環境負荷の削減に役立ち、発電所の設置抑制の効果もある。 (2)手法・技術 省エネルギー型機器や器具の設置、更新、こまめなスイッチ管理の徹底など。 @省エネルギー型のOA機器の導入・更新と適切な使用 既存機器の更新に当たっては、まだ使用できるものまで更新することは廃棄物の増大による新たな環境負荷を招くことになりかねないので、更新時期を考慮した購入が必要。 A省エネルギー型の蛍光灯への切り替えとスイッチの適正管理 Bその他、自販機の省エネ化、深夜残業時等の点灯管理など 深夜電力を利用(蓄熱式の給油設置等による利用など)することが発電所増設に伴う環境負荷を削減する観点からも有益となる。 3. 廃棄物発生量の削減(1)目的廃棄物処理に伴って生じる二酸化炭素を始めとしたさまざまな環境負荷を削減する。廃棄物処理場の延命化、新処分場設置を回避する。 (2)手法・技術 廃棄物を生じさせない(リデュース)、廃棄物を再利用(リユース)、再利用が不可能な場合はリサイクルするという優先順位に従う。 @用紙類の使用量の削減 ・会議用資料や事務手続きの一層の簡素化 ・各種印刷物の規格の統一化を図るとともに、ページ数や部数についても必要最小限となるように見直しを行なう。 ・両面印刷、両面コピーの徹底 ・使用済み用紙の裏面使用を図る ・使用済み封筒の再利用を図る ・A4判化の徹底による文書の一層のスリム化を図る ・電子メディア等の利用による情報システムの整備を進め、ペーパーレスシステムの確立を図る A分別回収の徹底 分別回収ボックス等による分別回収の徹底 (ex. 上質紙/雑紙/新聞紙に区分・・・地域のゴミ分別ルールにより異なる) B製品等の長期使用 ・机等の事務用品の不具合、更新を予定していない電気製品等の故障の際には修繕に努め、再利用を図る ・事務用品や電気製品の容器又は包装の再利用やリサイクルを図る ・詰め替え可能な洗剤、文具等を使用する ・会議などの飲料、弁当等の購入には、リターナブル容器で販売される商品を購入又は注文する ・空き缶や空きパックなどの飲料容器について、適正な回収ルートを設ける ・庁舎内、社内の販売店における使い捨て容器による販売の自粛を、販売商品の自由性を配慮して呼びかける C購入時の過剰包装の見直し 簡略で再生利用可能な包装・容器による商品購入の推進 Dリサイクルの推進 ・使い捨て製品の使用や購入の抑制を図る ・リサイクルルートの確保などを内容とする各庁舎、各社屋ごとのリサイクル計画を策定し、その確実な実施のための責任者を指名する ・紙の繊維を切断することにより再生紙原料としての品質が低下するため、シュレッダーの使用は秘密文書の廃棄の場合のみに制限する ・コピー機、プリンター機のトナーカートリッジの回収を進める ・職員への呼びかけにより、厨房施設から発生する生ゴミの量を抑制する ・効率的リサイクルの推進を図るため、収集ルートを決め、回収可能量のロットを大きくする 6. 不適合・改善要望事例と考察
★ヤッスー部長より一言★コンサルタントや審査員から各部署で最低1つは有益な環境側面を出すようにと言われ苦労しました。これと言って出てくるものがなく、結局、有害な環境側面の緩和手段を有益な側面として挙げざるを得ないという状況でした(有益の厳密な意味合いにまでは追求されませんでした)。上で偉そうなことを書いておきながら活動中に見逃していた側面は、 ●建物外側に据付けてあるコンプレッサー ●屋外廃棄物置場 ●製版部署の片隅に設置してある流し台 いずれも法に関わるものばかりなのに管理部署が曖昧であったために漏れてしまっていました。施設・設備の管理者をちゃんと決めていないとこういうことになります。 評価については、点数方式を採用しているところが多いようですが(当社もその中の1つ)、この方法が正しいというわけではありません(手法については規格の中で全く触れていません)。 管理者が集まって挙手により著しい環境側面を決定する方法を採用しているところもあります。要するに著しいとする根拠、プロセスが審査側に納得してもらえる方法であればよいということです。 ただし、法に関わる側面は必ず著しい環境側面になるような手順にしておいた方が、法の遵守という観点から見ても妥当でしょう。現に法に関する側面が著しい環境側面に決定されていないと必ず指摘を受けます。 |
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